珈琲問屋の手ごろなお試しセットを利用して、無作為にさまざまな種類の豆を試していた頃、私はフローラルな香りに出会い、そのほとんどがエチオピア産のコーヒー豆であることに気付きました。
浅煎りのコーヒーに傾倒するきっかけも、まさにエチオピアの豆からでした。
なぜエチオピアのコーヒー豆はその独自の個性を際立たせるのか。この記事では、エチオピアのコーヒーの特徴や商品名、グレードの付け方について詳しく探ってみましょう。これにより、コーヒー豆を選ぶ際に的確な判断ができるようお手伝いいたします。
エチオピアのコーヒーはなぜ美味しいのか
エチオピアのコーヒーの魅力は、さまざまな要因が組み合わさっているため、以下で詳しく解説します。
- 1.豊かな土壌
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エチオピアの高地には、栄養豊富な肥沃な土壌が広がっています。これにより、コーヒーの木は健康的に成長し、深い風味と味わいを醸し出すことができます。
- 2.高地での栽培
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高地での栽培は、太陽の光と適切な気温のもと、コーヒー豆の成長を促進します。これが、コーヒー豆に独特の風味と香りをもたらす要因です。
- 3.手摘み
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コーヒーの豆は、ひとつひとつ手作業で摘まれます。この手摘みにより、豆の熟度が均一になり、高品質なコーヒーが生産されます。
- 4.天日乾燥
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エチオピアでは、天日乾燥という独自の方法が一般的です。このドライプロセスにより、豆の表面に特有の果皮が残り、特別な風味と味わいが形成されます。
- 5.独自の処理方法
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エチオピアのコーヒーは独自の処理方法を取っています。たとえば、イルガチェフェでは、発酵後に水洗いされる方法が用いられます。これにより、フルーティーな味わいが引き立ちます。
これらの要素が結びついて、エチオピアのコーヒーは他の国々のものとは異なる独自の風味や味わいを持っています。そのため、多くの人々にとって、エチオピアのコーヒーはコーヒーの象徴的な味わいとして愛されているのです。
エチオピアの土壌の特徴は?
エチオピアの土壌は、アフリカ大地溝帯という大陸プレートの分裂帯に位置し、その地質的な特性から多彩な側面を示しています。
一般的に、エチオピアの土壌は非常に肥沃で、栄養が豊富なものとして知られています。また、アフリカ最高峰であるキリマンジャロ山のふもとなど、高地の地域では適度な酸性度を持つ土壌が広がっています。これらの土壌は、コーヒーの木にとって理想的な環境を提供し、深みのある風味や味わいを育む要因となります。
ただし、エチオピア内でも土壌の特性は地域によって異なります。エチオピアは広大な国土を有し、南部のジンバブエ地方のように、酸性土壌や険しい斜面が広がる地域もあれば、一方でイルガチェフェ地方のように比較的平坦な地形も見られます。したがって、土壌の特徴は地域ごとに異なるものの、全般的に豊富で肥沃な土壌が広がっていることが、エチオピアのコーヒーの美味しさに影響を及ぼす重要な要因の一つです。
コーヒーと火山は密接な関係を持っています。火山灰の多い土壌は、コーヒーの栽培に適しています。火山灰には、窒素、リン、カリウム、マグネシウムなどの栄養素が豊富に含まれており、これらはコーヒーの成長に欠かせない栄養素です。
さらに、火山地帯の地下水は、コーヒーに必要な適切な水分供給に大きな役割を果たしています。火山活動が起こる地域では、地下水が地熱によって温められ、微量のミネラルを含むことがあります。これらのミネラルは、コーヒーの風味に影響を及ぼす可能性があります。
エチオピアのイルガチェフェ地域は、火山性の土壌が広がる場所であり、ここで世界的に評価されるスペシャルティコーヒーが生産されています。
エチオピアの標高の割合は?
エチオピアは、高い標高を持つ高原地帯が広がる国です。この国の標高は、コーヒーの品質に大きな影響を与えています。エチオピアの標高の割合は、以下の通りです。
- 低地(海抜1,000メートル以下): 約20%
- 中高地(海抜1,000メートル~2,000メートル): 約60%
- 高地(海抜2,000メートル以上): 約20%
特に、標高2,000メートル以上の高地には、エチオピアを代表する多くのコーヒー産地が存在しています。こうした高地では、昼と夜の気温差が大きく、日照時間も長いため、ゆっくりとコーヒー豆が熟成し、深い風味と香りが醸し出されます。さらに、高地の特性により、降水量が多く、気温が異なるため、様々な風味を持つ複数のコーヒー品種を育てることができます。
エチオピアのコーヒーは、その多様性や独自の風味、そして歴史的な背景から、世界中で高い評価を受けています。特に高地で栽培されるコーヒーは、品質の優れたものとして広く知られています。
エチオピアの有名なコーヒー産地と標高
エチオピアには数々の著名なコーヒー産地が点在しています。以下に、その中でも代表的ないくつかのコーヒー産地とそれぞれの標高をご紹介します。
- ゲデオ(Gadeo):標高1,700〜2,200メートル
- シダモ(Sidamo):標高1,500〜2,200メートル
- ヤージョ(Yirgacheffe):標高1,800〜2,200メートル
- リンデン(Limmu):標高1,200〜2,000メートル
- ジンバブエ(Gimbi):標高1,500〜2,200メートル
これらの産地は、一つひとつが固有の風味や特性を有し、世界中で高い評価を受けています。たとえば、ゲデオ州やシダモ州は甘いフルーティーな香りが特徴的であり、ヤージョは華やかで芳醇な香りを放ち、リンデンはしっかりとしたコクと深みのある味わいが楽しめます。同様に、ジンバブエは豊かな酸味とフルーティーな味わいが特徴です。
エチオピアのコーヒーは、その多様性と特異な風味から、世界中で愛されています。特に高地で育まれるコーヒーは、その品質の優れた一面を持っていると言われています。
エチオピアの主なコーヒー収穫方法
エチオピアのコーヒーの収穫手法は、主に手摘みが一般的に行われています。手摘みは、コーヒーの品質を保つ上で極めて重要であり、完熟したコーヒーチェリーだけを収穫できるため、高品質なコーヒー豆を育てることができます。
一方で、機械を使用した収穫方法は、手摘みに比べて効率的であり、短時間で多くのコーヒーチェリーを収穫できる利点があります。しかし、機械による収穫は、完熟していないチェリーを誤って収穫する可能性があるため、品質が低下するリスクもあります。
このため、エチオピアのような高品質なコーヒーを生産する国では、手摘みが主要な収穫方法とされており、機械収穫はあまり一般的ではありません。ただし、近年は機械収穫技術の向上が進んでおり、将来的には機械収穫が増加する可能性も考えられます。
エチオピア産コーヒーのプロセスは?
エチオピア産コーヒーの製造過程は、大きく以下の3つに分かれています。
- ナチュラルプロセス(天日乾燥): 約60%の割合を占めています。ナチュラルプロセスでは、収穫されたコーヒーチェリーをそのまま日光で干し、自然な風味を引き出す方法です。チェリーをそのまま乾燥させることで、フルーティーで甘い風味が際立ち、エチオピアコーヒーの特有な味わいが生まれます。
- ウォッシュドプロセス(水洗式): 約40%の割合です。ウォッシュドプロセスは、収穫されたコーヒーチェリーの果肉を取り除いた後に、発酵、洗浄、そして乾燥させる手法です。このプロセスによって、コーヒー豆の酸味が強調され、明るくフルーティーな風味が生まれます。
- ハニープロセス(半水洗式): 少数派ですが増加しています。ハニープロセスは、ウォッシュドプロセスとナチュラルプロセスの中間的な手法で、一部の果肉を残して発酵させるプロセスです。この手法によって、コーヒー豆に独特の甘味と酸味が生まれ、ナチュラルプロセスのフルーティーな味わいとウォッシュドプロセスの明るい風味の両方を楽しむことができます。
このように、エチオピアのコーヒーは、主にナチュラルプロセスとウォッシュドプロセスの2つに分類されますが、近年はハニープロセスも増えてきています。
エチオピアで著名なコーヒー農園
エチオピアには数多くの著名なコーヒー農園が存在しますが、以下にその一例をご紹介します。
- イデアルコーヒーファーム – シダモ地方に位置するイデアルコーヒーファームは、エチオピア有数の著名な農園です。ここではアラビカ種のコーヒーが育てられ、その品質は非常に高く、多くのコーヒー愛好家から称賛されています。
- ゲデオ農園 – ゲデオ地方に広がるゲデオ農園は、フルーティーで豊かな風味が特徴のコーヒーを生産しています。この農園は地元のコーヒー生産者から厳選されたコーヒー豆を購入し、高品質なコーヒーの製造に取り組んでいます。
- ジョルジス・ファーム – イルガチェフェ地方に位置するジョルジス・ファームは、エチオピア屈指の有名なコーヒー農園です。こちらはコーヒー生産者から直接コーヒー豆を購入し、優れた品質のコーヒーを生み出しています。
- ミセリア農園 – シダモ地方に位置するミセリア農園は、エチオピアでも最も古い農園の一つです。ここではアラビカ種のコーヒーが栽培され、その品質は高く評価されています。
これらのコーヒー農園は、エチオピアのコーヒー文化において極めて重要な役割を果たしており、世界中のコーヒー愛好家から高い評価を受けています。
エチオピアのコーヒーの歴史
エチオピアは、コーヒーの原産地として知られています。伝承によれば、9世紀頃、エチオピア南西部のキャッファ地方の羊飼いカルディが、羊が興奮する植物を見つけました。カルディはその植物を食べさせたところ、自分自身も興奮する効果を感じました。そこで、彼はその植物を煎じて飲み物を作り、コーヒーの原型が生まれたとされています。
その後、エチオピアでは、コーヒーは日常的な飲み物として広く普及し、文化的にも重要な役割を果たすようになりました。また、コーヒーの輸出も盛んに行われるようになり、エチオピアは世界有数のコーヒー生産国として知られるようになりました。
ただし、コーヒーの輸出においては、長い間、国際市場での価格が低迷し、エチオピアのコーヒー農家たちは生活に困窮することがありました。最近では、スペシャルティコーヒーの需要が高まり、エチオピアの高品質なコーヒーが再び注目を集めるようになりました。
エチオピアのコーヒー歴史の出来事
以下は、エチオピアのコーヒーに関連する主な出来事を含む年表です:
- 850年頃: エチオピアの南西部のカッファ地方で、羊飼いが偶然コーヒーの効果を発見。
- 1000年頃: コーヒーの栽培が広まり、飲用されるようになる。
- 1515年頃: エチオピアのハラール地方で、最初のコーヒー市場が開かれる。
- 1600年頃: コーヒーが北アフリカやアラビア半島に伝わり、イエメンで栽培が始まる。
- 1700年代: ヨーロッパ諸国(オランダ、フランス、イギリスなど)がコーヒーの輸入を開始。
- 1880年代: エチオピアが主要なコーヒー輸出国となる。
- 1936年-1941年: イタリアによるエチオピアの占領が、コーヒー生産に大きな影響を及ぼす。
- 1950年代-1960年代: エチオピア政府が主導するコーヒー生産の増加により、エチオピア・コーヒーのブランドが確立される。
- 1975年: コーヒー輸出が国有化される。
- 1980年代: コーヒーの品質は低下、スペシャルティコーヒーの需要は増加しはじめる。
- 1990年代:エチオピアが自由化改革を進め、コーヒー産業も民営化される。
- 2007年: エチオピアがコーヒーの特許出願により、地域ブランド保護を目的としたトレーサビリティー・マーキング・システムを導入する。
- 2010年代:エチオピアのコーヒー生産量が増加し、国内外で高い評価を受ける。
- 2020年: 新型コロナウイルスの影響でコーヒー需要が減少し、輸出入に制限がかかり、エチオピアのコーヒー産業に影響を及ぼす。
以上が、エチオピアのコーヒーに関する主な歴史的出来事の年表です。
エチオピアの地域別のコーヒー生産量
2020年のエチオピアの各地域別コーヒー生産量は、国際コーヒー機関(ICO)の発表によれば以下の通りです。
- シダモ州:49万バッグ(1バッグ=60kg)
- オロミア州:45万バッグ
- ゲディオ州:26万バッグ
- イルガチェフェ州:18万バッグ
- ウォリガ州:14万バッグ
- ガンビラ州:11万バッグ
- シェカ・モコ州:5万バッグ
- リオ州:3万バッグ
- ハラリ州:1.6万バッグ
なお、ICOが提供するデータは推定値であり、実際の生産量とは異なる可能性があります。さらに、データの取得時期によっても差異が生じる可能性があるため、注意が必要です。
エチオピアのコーヒー:歴史から現在までの軌跡
コーヒーとエチオピアの豊かな関係を探る
エチオピアは、コーヒーの原産地として名高く、その豊かな歴史と多様性によって世界中のコーヒー愛好家を魅了しています。以下では、エチオピアのコーヒーに関する興味深い要点をご紹介します。
1. 起源と伝承
紀元前850年頃、エチオピアの南西部で羊飼いがコーヒーの効果を偶然発見しました。この出会いがコーヒー文化の始まりであり、その後コーヒーはエチオピア内外に広まっていきました。
2. 地域と風味
エチオピアの多様な地域ごとに、異なる風味がコーヒーに与えられます。シダモ州の甘いフルーティーな香りや、オロミア州の豊かな風味など、各地域が独自の特徴をもつコーヒーを生み出しています。
3. コーヒー生産と工程
エチオピアでは、主にナチュラルプロセス(天日乾燥)とウォッシュドプロセス(水洗式)の2つの製法が用いられています。ナチュラルプロセスによってフルーティーな風味が、ウォッシュドプロセスによって酸味が強調された明るい味わいが生み出されます。
4. 地域別生産量
エチオピアの各地域別のコーヒー生産量にはバラエティがあります。シダモ州やオロミア州などが高い生産量を誇り、ICOの推定値によれば、これらの地域がコーヒー生産の中心となっています。
5. 注意が必要なポイント
ICOが提供するデータは推定値であり、実際の生産量とは異なる可能性があります。また、データの取得時期によっても差異が生じることがあるため、情報の信頼性には注意が必要です。
エチオピアのコーヒーは、その多様性と個性的な風味から、コーヒー愛好家の間で高く評価されています。歴史的背景と地域ごとの特徴が織り成すエチオピアのコーヒー文化は、世界中の興味を引き続けています。
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